記事一覧
- 人間ドックとは、その概要と主な目的
- 人間ドック、コース料金・費用の相場、そして健康保険
- 人間ドック、受診のポイントと、生活習慣病予防への活かし方(1)
- 人間ドック、受診のポイントと、生活習慣病予防への活かし方(2)
- 人間ドック 新基準値のポイントと注意点
- 脳ドック、その概要と費用、人間ドックとの関連について
- 抗加齢ドック~主な検査項目と料金・人間ドックとの関連
・後期高齢者医療制度 5分で概要マスター
・特定健診と特定保健指導 3分でポイント理解
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・脳梗塞のリハビリと後遺症 押さえておきたいポイント
・脳梗塞と食事~予防・改善に向けた食事療法
人間ドック 新基準値のポイントと注意点
人間ドックで自分の検査値が「異常」と判定されることは、たとえその後に精密検査が必要でないとしても、なんとなくイヤな気分になるものですね。
2014年4月現在、人間ドックにおいて正常とされる「基準値(基準範囲)」は各検査項目ごと、以下のとおり定められています。
検査表の見方(日本人間ドック学会)
たとえば高血圧なら収縮期(上の血圧)が129mmHg以下、拡張期(下の血圧)が84mmHg以下が正常範囲、中性脂肪値は30~149mg/dl、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が60~119mg/dlが正常範囲となっています。
メタボ判定に使われるBMI(体格指数)は、男女共「25未満」が正常範囲となっています。
特にメタボ気味の体型や生活習慣病に悩まされることも多い中高年~高齢者にとっては、この範囲をキープし続けることはなかなか難しいのが実情です。
2010年時点の調査では、人間ドック受診者の実に「9割以上」に何らかの異常が認められていたことなども、その証左となるでしょう。
人間ドックとは、その概要と主な目的
たとえば血圧は加齢によって高くなる傾向にありますし、中性脂肪値やコレステロール値は、長期的には体質(遺伝)の影響も受けると言われます。
たとえ人間ドックでいくつかの「異常」項目を指摘されていても、日常生活において特に自覚症状も無く、問題無いと考えている方も少なくないでしょう。
従来基準は「厳しすぎる」との批判の声も聞かれるなか、2014年4月、日本人間ドック学会と健康保険組合連合会がこれまでに蓄積した約150万人の人間ドック受診者のデータをもとにして、「血液検査の新基準値を策定する」ことを発表しました。
健康診断の判定基準を改訂 150万人の調査結果を反映 人間ドック学会(保健指導リソースガイド)
新たな健診の基本検査の基準範囲 【PDF】(日本人間ドック学会・健康保険組合連合会)
この新基準値案では多くの検査項目で、正常範囲とされる数値が従来の基準から大幅に緩和されています。
たとえば以下の数値が提案されていますが、【 】内の従来基準と比べると、全体的に正常とされる範囲がずいぶん緩めになるのがおわかり頂けるでしょう。
また新基準では統計学的に差が認められたものについては、「男女別」「年齢別」に定められた数値が登場しています。
・新基準における正常基準値(一部抜粋)※【 】内は従来の基準値
・BMI 18.5~27.7(男性) 16.8~26.1(女性) 【25.5[男女共通]】
・収縮期血圧(上の血圧) 88~147mmHg[男女共通] 【130mmHg未満[男女共通]】
・拡張期血圧(下の血圧) 51~94mmHg[男女共通] 【85mmHg未満[男女共通]】
・中性脂肪値 39~198mg/dl(男性) 32~134mg/dl(女性) 【30~149mg/dl[男女共通]】
・LDLコレステロール 72~178mg/dl(男性) 61~152mg/dl(30-44歳女性) 73~183mg/dl(45-64歳女性)84~190mg/dl(65-80歳女性) 【60~119mg/dl[男女共通]】
これまで受診した150万人のデータから国際的基準に添った方法で1~1.5万人の「超健康(スーパーノーマル)」な人を抽出し、その検査値の分布を分析して新しい基準数値を決定したとのことで、基礎となるデータの母数の厚さを踏まえても、信頼性は高そうです。
ただし2014年4月段階において注意すべきは、この基準はまだ「案」に過ぎないということです。
現時点では、人間ドックにおける判定基準は変更されていません。また将来の新判定基準の正式決定までの間に、数値の範囲が調整される可能性もあります。
もう一つは、この正常とされる基準範囲案が、特定健診・特定保健指導や現時点で病院で定められている治療基準と異なっている点です。
高血圧やコレステロールの専門医は個別の病気ごとに設定されたガイドライン数値に基づく治療を行っているため、病院で治療を受ける予定の人は自分の検査数値について、よく医師と相談する必要があるでしょう。
最後に、新しい基準数値はあくまで「予防医学的な」観点から設定されたものであることを、踏まえておく必要があります。
検査時点である病気かどうかを判断するためのモノサシではありませんし、この基準範囲に収まっていたからといって、健康体とのお墨付きが得られるわけでもないのです。
血液検査だけで異常が判別し難い病気も数多くあることは、ご存知のとおりです。
いずれにせよ、一つしかない自分の身体と健康を予防的に維持するためツールの一つとして、日頃からこれらの検査数値に関心を持つようにしたいものですね。